株式投資
株式投資
株式 とは、株式会社が資金を調達するために発行するものです。株式は、単に「株」ともいいます。
株に投資することを、株式投資といいます。
株式と株主
株式を購入した人は、その会社の 株主 になります。株主には、以下のような権利があります。
- 議決権
- 株主総会での議案に賛否を表明できる権利。株数が票数になる。
- 利益配当請求権
- 会社の利益を配当として受け取れる権利。
- 残余財産分配請求権
- 企業が解散したときに、残った財産を分配してもらえる権利
株主総会に参加できるということは、会社の経営に参加するということです。会社が資金を調達する方法として、社債もあります。社債も株式も、会社にとっては資金を調達するための手段ですが、実質的にお金の借入と同じ社債に比べ、株式のほうは投資家が経営にかかわる点が大きく異なります。
証券取引所
株式の売買は、証券取引所 で行います(実際には、通常、証券会社を通じて行う)。
日本には、証券取引所は、東京、大阪、名古屋、福岡、札幌の5つがあります。
どこの会社の株式でも買えるわけではありません。証券取引所を通じて自社の株式を一般の人たちに売買してもらう(「株式公開」という)ためには、証券取引所の審査を受けて通る必要があります。この審査に通り、売買取引できるようになることを、上場 といいます。
審査の基準はいろいろあり、審査の厳しさに応じてグループ分け(上場区分という)をしています。
例えば、東京証券取引所の場合を見てみましょう。まず、時価総額250億円以上など、大企業ばかりを集めた市場第一部、時価総額20億円以上などの条件を満たす企業を集めた 市場第二部があります。また、新興企業を対象とした、マザーズ や JASDAQ(「ジャスダック」と読む)といった市場もあります。市場第一部に上場している企業は、一部上場企業 といわれます。
上場区分の名前が2022年4月から変わります
2021年時点では、市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ という上場区分がありますが、2022年4月からは、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つに編成される予定です。
株価
株価 とは、株式市場で売買されている価格 のことです。
一日の最初に取引された株価を始値(はじめね)、最後に取引された株価を終値(おわりね)といいます。また、一日の中で一番高かった株価を高値(たかね)、一番安かった株価を安値(やすね)といいます。この4つの株価をまとめて四本値(よんほんね)といいます。
株価は一日中動いていますが、その動きを手っ取り早く把握するために四本値を使います。新聞にも、四本値が載っています。
新聞には、他に、終値の前日比が書いてあります。白い三角△は前日より高くなったことを表し、黒い三角▲は前日より低くなったことを表します。
また、一日で取引が成立した株数のことを 売買高 や 出来高 といいます。
株価に発行済みの株式数を掛けたものを、時価総額 といいます。
株式の売買単位
株式の最低売買単位を 単元株 といいます。東京証券取引所の上場企業の場合、単元株は100株となっています。
ある会社の株価が1万円だったとしましょう。このとき、1万円を握りしめて「よし、この会社の株を買おう」と思っても買えません。100株単位で購入しないといけないので、最低100万円が必要となります。
また、売却するときも、100株単位なので、半分の50株だけ売る、というようなことはできません。
100株単位の売買というのは、個人が投資するには敷居が高いですね。
そこで、もっと少ない金額でも投資できる、株式累積投資 と 株式ミニ投資 という制度があります。通常の売買に比べると制約がありますが、かなり少ない金額でも投資できるようになっています。
株式累積投資(かぶしきるいせきとうし、略して「るいとう」ともいう)とは、毎月一定額ずつ、積み立て方式である銘柄を購入する方法です。金額は証券会社によって異なりますが、1万円以上から買えるところが多いです。
少ない金額で始められる反面、証券会社が指定する銘柄からしか選べない、議決権がない、などのデメリットがあります。
株式ミニ投資(通称は「ミニ株」) は、1単元の10分の1単位で売買できる制度です。これも少ない金額で投資できるメリットがありますが、証券会社が指定する銘柄からしか選べない、議決減がないというデメリットがあります。
また、ミニ株の場合は、今の市場価格で購入できない、というデメリットもあります。今注文をしても、翌日の一番最初の価格で売買する仕組みになっています。
株式の手数料
株の売買を行うと、約定代金(株価 x 株数)以外に、売買手数料がかかります。
売買手数料は、証券会社ごとによって異なります。約定代金に応じてかわるところが多いです。通常は、オンラインで取引すると手数料は安くなります。
売買手数料には消費税がかかるため、株を買う人は、次の金額を払うことになります。
買付価格 = 約定代金 + 売買手数料 + 消費税
また、株を売る際にも手数料と消費税がかかるため、次の金額を受け取ることになります。
売付価格 = 約定代金 - 売買手数料 - 消費税
株の売買が成立すると、約定日から数えて(約定日を含んで)3営業日目に、 決済(受け渡し) が行われます。例えば、火曜日に売買すると、決済は木曜日に行われます。
株式の注文
株の価格は、オークション方式で決まります。
株を買いたい人、売りたい人が、いくらで何株買いたいかを注文します。すると、高い値段で買いたい人、安い値段で売りたい人を優先的に取引を成立させていきます。このようなルールを、価格優先の原則 といいます。
価格が同じであれば、注文のタイミングがはやかった方を優先します。このルールを 時間優先の原則 といいます。
価格も注文タイミングも同じであれば、指値注文より成行注文を優先します。このルールを 成行優先の原則 といいます。
指値注文と成行注文
指値(さしね)注文 とは、価格を指定して注文する方法です。例えば、今150円の株があった場合、「100円になったら買う」という注文の仕方が指値注文です。
成行(なりゆき)注文とは、今取引できる価格で注文する方法です。すぐに取引が成立しますが、想定外の価格になる可能性があります。
値幅制限
ある企業の株に売り注文が殺到した場合、株価が急落することがあります。このとき、特に対策をしなければ、多くの投資家が損害をこうむってしまいます。
このようなことを防ぐため、1日の株価の変動を一定の範囲内に抑える 値幅制限 という制度があります。
値幅制限の上限まで価格が上昇することを ストップ高、下限まで下落することを ストップ安 といいます。
株価指数
株価指数 とは、株価の全体的な状況を示すために計算された指標です。
株式指数はいろんなものがありますが、代表的なものをあげていきます。
日経平均株価
日経平均株価 は、東京証券取引所に一部上場している企業のうち、代表的な225銘柄から構成されている指数です。日経平均 と略されることもあります。また、225銘柄から構成されているので、日経225 とも呼ばれています。
日本経済新聞社が銘柄の選定を行っており、定期的に銘柄は入れ替えられています。そのため、タイミングによっては、225銘柄よりも多かったり少なかったりすることもあります。
日経平均株価は、普通の「平均」ではない
日経平均株価という名前に「平均」と入っていますが、株価を単純に平均しているわけではありません。
例えば、ある企業が株式分割(1株を複数株に分割して、株価を安くし、購入してもらいやすくすること)などを行うと、単純平均では指数の連続性が保てません。
日経平均株価は、指数の連続性が保たれるように、修正が加えられています。
日経平均株価は、株価が大きい銘柄(値がさ株、という)の影響を受けやすい傾向があります。
東証株価指数
東証株価指数 は、東京証券取引所に一部上場しているすべての銘柄の時価総額を指数化したもの です。英語では、Tokyo stock price index といい、略して TOPIX (「トピックス」と読む)ともいいます。
日経平均株価は一部の銘柄しか含んでいませんが、東証株価指数は全銘柄が反映されています。ただし、時価総額が大きい銘柄の値動きを受けやすいという特徴があります。
海外の株価指数
海外にも株価指数があります。
ダウ平均株価 は、ダウ・ジョーンズ社が発表する、アメリカの代表的な30銘柄で構成する指数です。「ニューヨーク・ダウ」とも呼ばれます。
S&P 500 は、アメリカの代表的な500銘柄で構成する指数です。大型株から構成されています。
他にも、各国に株価指数はありますが、FP3級ではほとんど出題されません。
株式の投資指標
株式に投資する際、今の株価が高いのか、安いのか、なかなか判断しづらいです。そこで、株式に投資する際には、いろいろな指標が使われます。
株価収益率(PER)
1株当たりの利益に対し、株価が何倍になっているかを表す指標を、株価収益率 といいます。英語では、Price Earning Ratio といい、PER と呼ばれます。Price は株価のことです。Earn は稼ぐという意味の動詞で、Earning は利益のことです。Ratio は比率のことです。
株価収益率は、次の式で求めます。
株価収益率の計算式
株価収益率(PER) = 株価 ÷ 1株当たり純利益
純利益とは、売上から経費や税金などを差し引いた、最終的な利益のことを言います。
この株価収益率が大きいと、「利益のわりに株価が高い」ということなので、その株は割高だと判断されます。株価収益率が低いと、割安と判断されます。
上の計算に出てきた、1株当たり純利益は、英語では、Earning per share といい、略して EPS といいます。per は「~あたり」の意味で、share は株のことです。
1株当たり純利益は、次のように計算します。
1株当たり純利益の計算式
1株当たり純利益(EPS) = 純利益 ÷ 発行済み株式総数
EPSが高いほど、1株が生み出す純利益が大きい、ということです。
株価純資産倍率(PBR)
1株当たりの純資産に対し、株価が何倍になっているかを表す指標を、株価純資産倍率 といいます。英語では、Price Book-value Ratio といい、PBR と呼ばれます。book とは帳簿のことで、Book-value とは簿価、つまり、帳簿上の価格のことです。ここでは、純資産を指しています。
株価純資産倍率は、次の式で求めます。
株価純資産倍率の計算式
株価純資産倍率(PBR) = 株価 ÷ 1株当たり純資産
純資産とは、資産から負債を差し引いたものです。
今ある資産を全部売って、負債を全部返したとすると、理論上は、この純資産の部分だけが残ります。株主には、残余財産分配請求権(ページ冒頭でも出てきた、企業が解散したときに残った財産を分配してもらえる権利)があるので、1株当たりの純資産は、理論的には、株価以上になるはずです。
この株価純資産倍率が大きいと、「純資産に対して株価が高い」ということなので、その株は割高だと判断されます。株価純資産倍率が低いと、割安と判断されます。特に、1倍が一つの基準となっています。
割安だからといって
以前は、PBR=1倍が株価の底値の目安の1つとされていましたが、最近は1倍を割れてもそのままになっている銘柄も多くなっています。そのため、昔ほど「PBR1倍割れ」の重要性は薄れてきています。
割安だからといって、今後値段が上がっていく保証はありません。
上の計算に出てきた、1株当たり純資産は、英語では、Book-value Per Share といい、略して BPS といいます。
1株当たり純資産は、次のように計算します。
1株当たり純資産の計算式
1株当たり純資産(BPS) = 純資産 ÷ 発行済み株式総数
BPSが高いほど、企業の安定性が高い、といえます。
配当利回り
配当利回り とは、1株につき、どれだけ純資産があるかを表す指標で、次の計算式で求めます。
配当利回りの計算式
配当利回り = 1株当たり配当金 ÷ 株価 x 100
株価が同じでも、配当金が多ければ配当利回りは大きくなります。
配当性向
配当性向 とは、利益からどれくらいの割合で配当が支払われているかを表す指標で、次の計算式で求めます。
配当性向の計算式
配当性向 = 配当金総額 ÷ 純利益 x 100
配当性向が大きいと、純利益を株主に多く還元していることがわかります。
自己資本比率
自己資本比率 とは、自己資本が総資産のどれだけを占めているかを表す指標で、次の計算式で求めます。
自己資本比率の計算式
自己資本比率 = 自己資本 ÷ (負債 + 自己資本) x 100
負債と自己資本とを足したものが総資産です。自己資本比率が大きいと、負債に頼っていないため、健全性が高いと判断できます。
昔はバラバラだった単元株
今は、基本的に単元株は100株となっていますが、昔は、1株、100株、1000株と企業によってバラバラでした。株を買うときに、単元株を調べるのは面倒なので、みんなそろっていた方がいいですね。