不動産の関連法規

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不動産に関する法令

不動産の取引をして土地を買ったとしても、自分の好き勝手に建物を建てることはできません。不動産に関してさまざまな法律があり、たくさんの制約があります。

ここでは、都市計画法、建築基準法、農地法、区分所有法について見ていきます。

都市計画法

もしも、みんなが自由に土地を売買し、好き勝手に建物を建ててしまえるとすると、いろいろな問題が起きる可能性があります。

例えば、大きなマンションが乱立してしまうかもしれません。家が密集し過ぎて、通気性が悪く、火事が起こったときに被害が大きくなる可能性も出てきます。道路や公園は狭いままで放置され、緑地が減ることもあるでしょう。

このように、みんなが自由気ままに土地を買ったり建物を建てたりすると、都市全体としての機能が低下し、環境が悪化する可能性があります。こうしたことを避けるため、都市の将来あるべき姿を想定し、そのために必要な規制・誘導・整備を行って、都市を発展させていくことを 都市計画 といいます。そして、この都市計画について定めた法律を、都市計画法 といいます。

都市計画区域

都市計画の対象となる地域は、都市計画区域 といいます。どこを都市計画区域にするかは、都市計画法に基づいて都道府県知事が指定します。複数の都道府県にまたがるときは、国土交通大臣が指定します。

都市計画区域の中には、すでに市街化になっている区域や今後10年以内に優先的・計画的に市街化を図るべき区域である 市街化区域 と、市街化を抑制する区域である 市街化調整区域 があります。

市街化調整区域は、市街化を抑制する区域なので、新たに家を建てるのは難しいエリアです。ここに新しく建物を建てるなら、都道府県知事の開発許可などが必要です。今建っている家を壊す必要はないですが、建て替えにさえ開発許可が必要となります。

そのため、新しく家を建てるなら、基本的には市街化区域になります。市街化区域では、1,000平方メートル以上 の規模なら都道府県知事などの開発許可が必要ですが、それ未満なら開発許可は必要ありません。

1,000平方メートルって

1,000平方メートルは、だいたい、バスケコートが2面ある体育館くらいの広さです。

この市街化区域と市街化調整区域を合わせて「線引き区域」といいます。都市計画区域のうち、線引き区域以外の区域を、非線引き区域といいます。非線引き区域は、制限がゆるく、比較的自由に土地を利用できるというメリットがあります。しかし、逆にいうと、まわりの環境もかわりやすいというデメリットもあります。

建築基準法

不動産に関する法律として、建築基準法という法律もあります。

建築基準法とは、建築物の最低基準を定めている法律です。安全性に関するルールだけでなく、建築物が都市計画と調和するように定めているルールもあり、先ほどの都市計画法とも関連している法律です。

道路に関する制限

交通の安全や防火などの目的のため、建築物と道路に関する制限が設けられています。

まず、建築基準法では、道路は幅員(「ふくいん」とよむ。道幅のこと)4メートル以上 と定められています。道幅に制限があるのは、消防車や救急車などの緊急車両が通行できるようにする、などの目的のためです。

道幅4メートルとは

道幅4メートルとは、普通乗用車同士がギリギリすれ違うことができるくらいの幅です。

しかし、建築基準法ができたときにはすでに存在していた道路もあります。中には幅が4メートル未満のものもあります。このような道路のうち、特定行政庁が道路として指定したものは、建築基準法上の道路とみなされます。このルールは建築基準法42条第2項に定められているため、2項道路と呼ばれたり、みなし道路といわれたりします。


敷地に建物を建てる場合は、建築基準法に定められた道路に2メートル以上接していなければならない という決まりがあります。このことを、接道義務 といいます。

接道義務があるため、道路に2メートル未満しか接していない敷地には、建物を建てることはできません。更地を買って、そこに家を建てようとするときには注意が必要です。


また、2項道路の場合は、道路の中央から2メートル以上後退したところに建物を建てなければいけない、という決まりがあります。このように後退することを、セットバックといいます。

例えば、道幅が3メートルの場合、中央から2メートル下がるということは、今の敷地と道路の境界線から0.5メートルだけセットバックするということです。

すでに建っている家は対応する必要はありませんが、建て直すときにはセットバックが必要です。今は4メートルの道幅がない道路でも、道路の両側でセットバックがすむと、4メートルの道路ができあがる、ということですね。

もし、道路の向かいが川や崖などの場合は、川や崖の境界線から4メートルのセットバックが必要になります。例えば、道幅が3メートルで向かいが川なら、今の敷地と道路の境界線から1メートルだけセットバックする必要があります。

用途に関する制限

建築基準法では、工業専用地域に住宅を建ててはいけない、などというように、建築用途にルールが定められています。

都市計画法によって、都市計画区域が決められていますが、この区域の中で、13種類の用途地域が定められています。この用途地域にあわせて、建築用途が制限されています。

用途地域は、大きく、住居系、商業系、工業系の3つに分かれます。

住居系のうち、第一種低層住居専用地域第二種低層住居専用地域 は、低層住宅の良好な住環境を守るための地域です。かなり厳しい制約があります。

住宅はもちろんOKですが、建物の高さ制限があるため、大きなマンションを建てることはできません。事務所や住環境を損なう遊戯施設(ボーリング場やカラオケボックスなど)はダメですし、大学や病院ですらダメです。第一種のほうが制限が厳しいですが、どちらの地域も、閑静な住宅街といえます。

第一種中高層住居専用地域第二種中高層住居専用地域 は、中高層住宅の良好な住環境を守るための地域です。ざっくりいえば、マンションが建つ地域のことです。

低層住居専用地域よりも制約が緩くなります。大学や病院を建てることもでき、事務所(第二種のみ)や店舗も小さければ建てることが可能です。また、住環境を損なう遊戯施設や工場はダメなので、騒音で悩まされるようなことはないでしょう。

第一種住居地域第二種住居地域 は、住居の環境を保護するための地域であり、中高層住居専用地域よりもさらに制約が緩くなります。

大きめの店舗や事務所を建てることができるようになり、パン屋などの作業場付きの店やホテルもOKになります。また、小さな自動車修理工場も可能となります。近くに店があるので利便性がありますが、人通りが多くなり、音が気になることがあるかもしれません。

準住居地域 は、道路の沿道等において、自動車関連施設などと、住居が調和した環境を保護するための地域です。第二種住居地域よりさらに制約が緩くなります。準住居地域は幹線道路沿いに設定されることが多く、マンションの他に、飲食店、大規模店舗、事務所、自動車ディーラー店などが並びます。

田園住居地域 は、農地や農業関連施設などと調和した低層住宅の良好な住環境を守るための地域です。これは、2018年4月に追加されたばかりの地域です。基本的に、低層住居専用地域と同じ規制があります。

ここまでが、住居系の用途地域です。


商業系の用途地域は、近隣商業地域と商業地域の2つに分かれます。商業系といっても、店舗だけでなく、住宅を建てることも可能です。

近隣商業地域 は、近隣の住民が日用品の買物をする店舗等の、業務の利便の増進を図る地域です。駅前商店街のイメージです。住宅の他に、ホテルやパチンコなどが建設できます。

商業地域 は、商業等の業務の利便の増進を図る地域です。工場や危険物等に規制があるほかは、ほとんどすべての商業施設が規制なく建築可能です。大都市の駅前のイメージです。


最後の工業系は、準工業地域、工業地域、工業専用地域の3つがあります。

準工業地域 は、環境悪化の恐れのない工場の利便を図る地域です。工場の他に、住宅や商業施設も建ち並ぶエリアです。昔から町工場が多い住宅地に指定されていることが多いです。制約はかなり緩いです。

工業地域 は、工業の業務の利便の増進を図る地域です。住宅を建てることはできますが、危険物を扱う工場が建つ可能性もあるので、あまり住宅には適していません。なお、幼稚園や学校を建てることは禁止されています。

工業専用地域 は、文字通り、工業施設の建設をメインとした地域です。ここには住宅を建てることはできません

以上が、13種類の用途地域と、その概要です。もし、敷地が複数の用途地域にまたがっている場合は、敷地の過半を占める用途地域の規制に従います。

建ぺい率の制限

更地に建物を建てるとき、せっかくなので、敷地ギリギリまでを使って建物を建てたくなるかもしれません。しかし、そんな建て方をみんながしてしまうと、火事などが起こったときにとても危険です。風通しの観点でも望ましくありません。

このため、敷地面積に対する建物面積の割合に対して、制限が設けられています。この割合を 建ぺい率 といいます。建ぺい率には上限が設定されており、この上限のことを 指定建ぺい率 といいます。

建ぺい率の計算

建ぺい率 = 建築面積 ÷ 敷地面積

建築面積とは、建物を上から見たときの面積です。ざっくりいえば、1階の面積と考えていいでしょう。敷地面積は、建物を建てる敷地の面積です。

例えば、100平方メートルの敷地に建築面積が60平方メートルの建物を建てる場合は、建ぺい率は
60 ÷ 100 = 60%
となります。

建ぺい率の上限(指定建ぺい率)は、用途地域によって、30%から80%までの値が定められています。この上限を超えて建物を建てることは、基本的にできません。

1つの土地に複数の指定建ぺい率がまたがっている場合は、加重平均で計算します。

例えば、500平方メートルの土地があり、内200平方メートルの指定建ぺい率が50%、残り300平方メートルの指定建ぺい率が60%だったとすると、建てられる最大の建築面積は
200 x 50% + 300 x 60% = 100 + 180 = 280 平方メートル
となります。これから、この土地に対する建ぺい率の上限は
280 ÷ 500 = 56%
と計算できます。

建ぺい率の緩和規定

指定建ぺい率は、条件を満たせば緩和されます。

まず、「防火地域内の耐火建築物は、建ぺい率の制限が緩和される」というルールがあります。防火地域とは、都市計画で、火事対策を講じる地区として指定されたエリアのことです。この条件を満たすと、もともと上限が80%だった場合は建ぺい率の制限がなくなります。80%以外だった場合は、上限がプラス10%されます。

また、特定行政庁の指定する角地にある場合は、上限がプラス10%されます。

容積率の制限

建物を建てるときに、高いマンションばかり建ってしまうとどうなるでしょうか。もしすべての部屋が埋まれば、一気にたくさんの人がその街で暮らすことになります。このように急に人口が増えてしまうと、都市としては、急いでインフラ整備をする必要が出てくるかもしれません。

このようなことを防ぐため、敷地面積に対する建物の延べ面積の割合に対して、制限が設けられています。この割合のことを 容積率 といい、用途地域によって容積率の上限が定められています。

容積率の計算

容積率 = 建物の延べ面積 ÷ 敷地面積

建物の延べ面積とは、各階の床面積を合計したものです。

例えば、150平方メートルの敷地に、各階100平方メートルの3階建ての建物を建てる場合は、容積率は
(100 x 3) ÷ 150 = 200%
となります。

容積率の上限(指定容積率)は、用途地域によって異なる値が定められています。

容積率の場合は、さらに、「前面道路制限」というものがあります。

前面道路の幅が12メートル未満の場合、前面道路の幅に法定乗数を掛けたものを計算し、これと指定容積率の小さい方が上限となります。法廷乗数は、住居系用途地域なら0.4、それ以外(商業系・工業系)は0.6を使います。

例えば、ある地域の指定容積率が 400% だったとします。もし前面道路の幅が8メートルなら、住居系用途地域の場合は
8 x 0.4 = 3.2 = 320%
と計算し、これと指定容積率を比較すると、320%のほうが小さいので、容積率の上限は320%となります。

住居系以外の場合は
8 x 0.6 = 4.8 = 480%
と計算し、これと指定容積率を比較すると、400%のほうが小さいので、容積率の上限は400%となります。

前面道路の幅が12メートル以上なら、指定容積率をそのまま使います。また、複数の道路に面している場合は、最も道幅の広い道路を使って計算します。

1つの土地に複数の指定容積率がまたがっている場合は、加重平均で計算します。

区分所有法

戸建てのマイホームを買うと所有者は自分だけなので、増築、改装、何をしようが法律の範囲内なら自由です。しかし、マンションの場合は少し異なります。

区分所有法 では、分譲マンションなどの集合住宅における共通の管理や使用について定めています。

分譲とは、「分割譲渡」の略です。マンションは1戸1戸分割して売るので、このように販売しているマンションを、分譲マンションといいます。

分譲マンションの各住戸の所有者のことを、区分所有者といいます。

専有部分と共用部分

マンションには、自分だけが使う部分と、みんなで共用する部分があります。

例えば、自分の部屋やベランダなどは、自分が購入して自分だけが使う部分です。このような部分を 専有部分 といいます。

一方、マンションのエントランス、廊下、エレベーター、非常階段などは、区分所有者みんなで共用する部分です。このような部分を 共用部分 といいます。マンションのうち、専有部分以外はすべて共用部分です。


マンションの土地については、区分所有者みんなの共有となっています。区分所有者が持っている土地に関する権利のことを「敷地利用権」といいます。

専有部分とその敷地利用権とを切り離して別々に処分することはできません。このことを、分離処分の禁止といいます。

管理組合

専有部分は自分の好きなように使えばいいですが、共用部分は一人で好き勝手に使ったり管理することはできません。みんなのものなので、みんなで管理する必要があります。

区分所有者は、建物の共用部分や敷地の管理を行うために、管理組合を結成することになっています。管理組合員になることを拒否することはできません。

管理組合は、規約の作成(ルール作り)、集会の開催(意思決定)などを行います。

集会

マンションの管理組合では、少なくとも年1回以上の集会をひらき、マンションの管理方法などを決めないといけません。

集会の議題は、通常、区分所有者・議決権の過半数で決定します。

議決権は、通常、専有部分の面積に比例します。

普通の議題は過半数でいいのですが、規約の設定・変更・廃止は重要なので、これらを行うときは4分3以上の賛成が必要です。また、建て替えに関しては、さらに重要なので、5分の4以上の賛成が必要となります。

農地法

農地の取引には、農地法による制限があります。

もし農地の取引に制限がないと、例えば、農地を買った人が、そこに家を建ててしまうかもしれません。こういうことをする人がたくさん出てくると、国民への食料供給の観点から問題が起きるかもしれません。そのため、農地の取引には一定の制限が設けられています。

まず、農地の売買 は、農地委員会の許可が必要です。許可を受けずに売買したときは、契約は無効になります。

農地の転用、つまり、農地だったものを農地以外にのものにする場合、基本的には、農業委員会への届出と、都道府県知事の許可が必要です。ただし、市街化区域内にある農地は、農業委員会への届出だけで終わるケースもあります。

農地の貸借は、農地委員会の許可や農地の利用権設定が必要です。最近、農地を借りて一定期間だけ農業をやる、という人が増えています。農地の貸借は、借り手が貸し手から急に農地の返還を求められたり、貸し手が借り手から農地を返還してもらえなかったりするトラブルが増えています。口約束で貸し借りをするのではなく、トラブルを避けるためにも、農地委員会を通すようにしましょう。

問題を解いてみましょう

ここまでの内容を踏まえて、問題を解いてみましょう。〇か×かを答える問題と、3つの選択肢から選ぶ問題があります。

todo: 農地の転用、防火地域および準防火地域

例題

都市計画法において、市街化調整区域とは、おおむね10年以内に計画的に市街化を図るべき区域とされている。

Answer

×
市街化調整区域とは、市街化を抑制する区域のことです。

なお、すでに市街地を形成している区域、および、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域のことは、市街化区域といいます。

例題

都市計画法の規定によると、市街化区域内において、(???)以上の規模の開発を行うには、原則、都道府県知事等の許可を受けなければならない。

a. 1,000平方メートル
b. 3,000平方メートル
c. 10,000平方メートル

Answer

a
市街化区域内では、1,000平方メートル以上の規模の開発を行うには、原則、都道府県知事等の開発許可が必要です。

例題

建築基準法の規定では、都市計画区域内の建築物の敷地は、原則として、幅員( 1 )以上の道路に( 2 )以上接しなければならない。

a. (1) 2メートル (2) 4メートル
b. (1) 4メートル (2) 2メートル
c. (1) 4メートル (2) 4メートル

Answer

b
建築基準法では、原則として、道路の幅は4メートルです(例外として、2項道路があります)。建物がある敷地は、道路に2メートル以上接しなければいけないという、接道義務があります。

例題

いわゆる2項道路については、原則として、その中心線から(???)後退した線がその道路の境界線とみなされる。

a. 1メートル
b. 2メートル
c. 4メートル

Answer

b
2項道路は、4メートルの道路を作るため、中心から2メートル後退した線を道路との境界線をみなします。両側で後退すると、4メートルの道路ができあがります。

例題

建築基準法において、建築物の敷地が2つの異なる用途地域にわたる場合、その敷地の全部について、敷地の過半の属する用途地域の建築物の用途に関する規定が適用される。

Answer


正しい記述です。

例題

区分所有法の規定によると、建物を取り壊し、新しい建物を新築するための建替え決議には、区分所有者および議決権の各(???)以上の賛成が必要である。

a. 3分の2
b. 4分の3
c. 5分の4

Answer

c
建替え決議には、区分所有者・議決権の5分の4の賛成が必要です。