相続と税金

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相続税

相続や遺贈によって財産を取得したときには、財産を取得した個人に、相続税 がかかります。

相続税は自分で申告しなければいけません。財産を分ける作業もありますし、税金の計算もあります。それに、10カ月以内という時限もあるので、なかなか大変な作業となります。

相続税の課税財産

相続税の課税対象の財産には、現預金、株式、不動産などの経済的な価値のある資産である 本来の相続財産 と、実質的に相続財産とみなせる みなし相続財産 があります。

みなし相続財産には、例えば、以下のようなものがあります。

  • 契約者と被保険者が被相続人で、保険金の受取人が相続人である場合の死亡保険金
  • 被相続人の退職金のうち、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金

また、後で述べるように、生前贈与財産、相続時精算課税制度により贈与された財産なども対象となります。

生前贈与財産

被相続人が亡くなる前の3年間に被相続人から贈与された財産を、生前贈与財産といいます。この贈与についてはすでに贈与税を払っていますが、相続時に相続税の課税財産に加算されます。価格は贈与時の価格で計算されます。なお、相続税はすでに払っている贈与税額を控除します。

特に、相続開始の年に被相続人から贈与されている場合は、贈与税ではなく相続税の課税対象となります。

相続税の非課税財産

以下のような財産は、相続税の非課税資産となります。

仏壇など

仏壇、仏具、墓地などは、非課税です。

死亡保険金の一部

被相続人の死亡により取得した死亡保険金のうち、「500万円 x 法定相続人の数」が控除されます。

法定相続人は、相続を放棄している人もカウントします。

また、養子がいる場合は少し変わった数え方をします。普通養子縁組の場合、実子と養子がいる場合は、養子1人までを法定相続人として数え、養子だけの場合は養子2人までを法定相続人として数えます。

特別養子縁組の場合は実子と同じように数えます。

死亡退職金の一部

被相続人の死亡により取得した死亡保険金のうち、「500万円 x 法定相続人の数」が控除されます。生命保険のときと同じ額です。

弔慰金の一部

被相続人の勤務先から、亡くなったものへの弔い(とむらい)のために相続に使われる弔慰金について、一定額が非課税です。

業務上の死亡の場合は、「死亡時の給与 x 36ヵ月」が控除となり、業務外の場合は、「死亡時の給与 x 6か月」です。

相続税の債務控除

相続税では、被相続人が残した借入金や葬式にかかった費用などを支払った場合、相続財産の価額から差し引くことができます。これを 債務控除 といいます。

次のようなものを支払った場合、債務控除として控除できます。

  • 借入金やその未払い
  • 所得税など税金の未払金
  • 各種費用の未払金

逆に、以下のものは債務控除の対象外です。控除できません

  • 団体信用保険のついた住宅ローン
    • 保険金で住宅ローンが支払われるためです。
  • 墓地や仏壇などの購入費用の未払金
    • 墓地や仏壇などは相続税の非課税資産だからです。
  • 遺言執行費用など
    • 相続人が負担すべきものは控除できません。

葬式費用は債務ではないですが、葬式費用も控除することができます。

葬式費用に入るものは、お通夜や葬儀にかかった費用や火葬などにかかった費用、寺へのお布施などです。一方、香典返しの費用や法事(初七日、四十九日)に関する費用は控除できません。

相続税の計算

相続税の計算は、課税対象となる課税遺産総額の計算、それに対する相続税の総額の計算、最後に各相続人の税額の計算、というステップで行います。

課税遺産総額の計算

課税遺産総額を計算するには、次の4つをまず足します。

  • 本来の相続財産(相続、遺贈、死因贈与で取得した財産)
  • みなし相続財産
  • 相続開始前3年以内の生前贈与財産
  • 相続時精算課税による贈与財産

ここから、以下の内容を控除(引くこと)します。

  • 非課税財産
  • 債務控除の対象財産
  • 葬儀費用

このようにして、正味の遺産額を計算します。

ここから、基礎控除 をひくことができます。基礎控除の額は法定相続人の人数で決まります。

相続税の基礎控除額

相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 x 法定相続人の数)

法定相続人の人数は、死亡保険金の非課税金額のときと同じように計算します。つまり、相続を放棄した人も含みます。また、養子がいる場合は、普通養子縁組なら、実子と養子がいる場合は養子1人まで、養子だけの場合は養子2人までを法定相続人として数えます。特別養子縁組の場合は、実子と同じように数えます。

こうして、基礎控除を引いた後の金額を、課税遺産総額 といいます。

正味の遺産額が基礎控除を下回っていた場合、相続税はかからず、相続税の申告も不要です。

相続税の総額の計算

課税遺産総額を計算した後は、一旦、それを法定相続分の通りに分けたと仮定し、それぞれに税率を掛けて、合計する、という計算を行います。こうして、相続税の総額を計算します。

税率は以下のページにあります。

相続税は金額によって税率が高くなるので、分けてから税率を掛けて合計するやり方のほうが、相続税は安くなります。

実際の分け方とは違っても、相続税の総額の計算では、一旦このように計算します。

各相続人の税額

相続税の総額を計算した後は、実際に取得した課税価格の割合で、相続税を割り振ることになります。このとき、控除などの計算を行います。

相続税の2割加算

被相続人から相続や遺贈によって財産を受け取った人で、被相続人の配偶者でも 1親等の血族(父母、子)でもない人に対して、相続税を 2割加算 します。対象になるのは、例えば、兄弟姉妹や孫などです。

なお、代襲相続人になっている孫などは、子と同じ扱いなので、2割加算の対象にはなりません。

配偶者の税額軽減

被相続人の配偶者が取得した財産は、次のどちらか高い方の金額まで、相続税は課税されません。これを、配偶者の税額軽減といいます。

  • 1億6,000万円
  • 法定相続分相当額

例えば、配偶者と子が相続人だったとします。もし、課税対象額が6億円だったら、法定相続分相当額が3億円なので、この金額まで課税されません。また、課税対象額が2億円だったら、法定相続分相当額が1億円ですが、1億6,000万円まで課税されません。

相続者が配偶者しかいない場合は、配偶者の法定相続分相当額は100%なので、相続税は一切かかりません。

この軽減を使うには、正式な婚姻関係が必要です。婚姻期間は関係ありません。

また、この軽減によって相続税がゼロになる場合でも、申告は必要です。

贈与税額控除

相続・遺贈より受け取った財産が、相続開始前3年以内に受け取っていたものであれば、すでに支払った贈与税額・相続時精算課税により払った贈与税額を、相続税額から控除できます。

これは、純粋に税金が減るというよりは、過去に納めていたものとの相殺といえます。

未成年者控除

相続・遺贈を受けた人が未成年の場合は、成人に達するまでの年数に対し、1年ごとに10万円が控除されます。これを、未成年者控除といいます。

例えば、15歳9か月の場合、成人までは4年3か月あります。この端数は切り上げて、5年とします。この場合は、
5年 x 10万円 = 50万円
が控除されることになります。

相続税の申告と納税

相続税の申告義務がある人は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内 の間に、死亡した被相続人の納税地の所轄税務署長に申告しなければいけません。

相続額が基礎控除を下回っていれば申告は不要です。ただし、配偶者の相続税額軽減を適用することで相続額がゼロになる場合は申告が必要です。

また、被相続人が亡くなった年に被相続人に所得があった場合、被相続人の所得税の申告が必要です。このことを、準確定申告といいます。相続人は相続の開始があったことを知った翌日から4か月以内に、準確定申告を行わなければいけません。


相続税の納付は、申告の期日までに金銭で納めなければいけません。しかし、例えば、不動産などを受け取ったときには、すぐには金銭を用意できない場合もあります。このような場合には、条件を満たせば、延納ができます。

延納を行うには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 相続税額が10万円を超えていること
  • 金銭で納付することが困難であること
  • 延納税額と利子税額分の担保を差し出すこと
  • 申告期限までに、延納申請書などを出すこと

延納のできる期間と延納にかかる利子税の割合は、財産の中で不動産が占める割合によって変わります。


延納をしても金銭納付が困難な場合は、物納 も認められています。

相続税と贈与税における物納の違い

相続税の場合は、物納が認められていますが、贈与税の場合は、物納は認められていません。

物納とは、金銭ではなく財産で税金を納めることです。相続税の納付の際、物納を利用するには、以下の条件があります。

  • 延納しても金銭で納付できない理由があること
  • 物納的確財産で納めること
  • 期限(申告期限から10年以内)までに物納申請書を提出し、税務署長の許可を得ること

物納に使える財産は、相続または遺贈によって取得した相続財産のうち、国内にあるものに限られます。また、次のように順位がついており、上位から優先して物納します。

第1順位
国債、地方債、不動産、船舶、上場株式、上場社債、上場証券投資信託
第2順位
非上場の社債・株式・証券投資信託
第3順位
動産

また、他の人と共同で所有しているものは、物納には使えません。抵当権などがついているものも使えません。処分できるものであることが必要です。