贈与と法律

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贈与とは

ライフプランを作成する上で、自分が亡くなったときに子どもたちに資産をどのように遺す(のこす)か、という問題を考える機会もあります。もちろん、自分がいつ亡くなるかはわからないので、遺し方を完全にコントロールできるわけではありませんが、ある程度の対策をたてることはできます。

自分が生きている間にできる方法として、子どもたちに事前に財産の一部を与えておく、というやり方があるでしょう。

財産を無償で誰かに与えることを 贈与(ぞうよ)といいます。このとき、与える人を贈与者、受け取る人を受贈者(じゅぞうしゃ)といいます。FPでは、贈与者と受贈者が親族であるケースを考えることが多いですが、一般には、親族ではないケースもあります。

贈与契約

贈与については、民法で規定されています。贈与は、当事者間の合意で成立します。書面で契約する必要はなく、口約束でも契約は成立します。

ただ、口約束など、書面によらない贈与契約は、財産を渡すまでは、贈与者・受贈者どちらからでも解除することができます。「あげると言ってたけど、やっぱりやめた」「もらうと言ってたけど、やっぱりいらない」ということができてしまうわけです。

そのため、書面によらない贈与契約では、契約をしただけでは受け取ったことになりません。受け取るまではいつでも解除されうるので、本当に財産を受け取ったとき(贈与が履行(りこう)されたとき)が取得時期となります。お金なら、実際に受け取ったときや振り込まれたときで、不動産なら、登記により名義変更をしたときです。

履行があった後は、解除できません。「あげたけど、やっぱり返して」は通用しないということです。また、「毎月5万円あげるね」といって3か月渡した後、「やっぱりこれからはあげるのをやめるね」はできますが、「あげた15万円を返して」はできません。


一方、書面による贈与契約の場合は、贈与契約の効力が発生したとき(基本は、契約日)に、財産を取得したとされます。

書面で契約した場合は、相手の承諾がないと解除できません。

財産をいつ取得したかは、後で出てくる「贈与税の計算」に影響してきます。

贈与の種類

贈与のうち、一番基本的なものは、都度、当事者双方の意思表示のみにより成立する贈与です。これを 単純贈与 といいます。

他には、以下のような種類の贈与があります。

定期贈与

定期贈与 とは、贈与者から受贈者に定期的に給付する贈与です。

10年間、毎年100万円を贈るというような内容です。

負担付贈与

負担付贈与 とは、受贈者が負担を負うことを条件にした贈与です。受贈者が負担を追わない場合は、贈与契約は解除されます。

残りの住宅ローンを払ってくれるなら家をあげる、というような内容です。

停止条件付贈与

停止条件付贈与 とは、条件をクリアしたら効力が発生する贈与です。条件を満たすまで、効力が停止した状態になっています。

大学に合格したら、100万円あげる、というような内容です。この場合は、もしこの契約内容を書面にしていれば、100万円をもらったことになるのは、大学に合格したときです。

死因贈与

死因贈与 とは、贈与者の死亡によって効力が発生する贈与です。贈与には一般的に贈与税がかかりますが、死因贈与の場合は、贈与税ではなく相続税の課税対象となります。

私が死んだら、この家をあげる、というような内容です。

遺書を遺した場合とは少し異なります。贈与は当事者の合意がないといけませんが、遺書の場合はもらう側の意志には関係ありません。

問題を解いてみましょう

ここまでの内容を踏まえて、問題を解いてみましょう。〇か×かを答える問題と、3つの選択肢から選ぶ問題があります。

例題

書面によらない贈与契約は、既に履行が終わった部分を除き、贈与者または受贈者のどちらからでも解除をすることができる。

Answer


その通りです。書面によらない贈与契約は、履行が終わった部分以外は、当事者のどちらからでも解除できます。

例題

贈与税の課税において、停止条件付贈与により受贈者が受け取った財産の取得時期は、その贈与契約をした時である。

Answer

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停止条件付贈与とは、ある条件を満たせば贈与する、という契約です。条件をクリアするまでは財産を受け取ったことにはなりません。