ファイナンシャル・プランニングと倫理
ここでは、ファイナンシャルプランニングの役割や、ファイナンシャルプランナーに求められる職業倫理について見ていきます。職業倫理については、FP3級の試験でも出題されることがあります。
ファイナンシャル・プランニングの社会的ニーズ
現在、個人の生き方は、多種多様になっています。
昔は「30くらいまでに結婚して、男性は新卒で入った会社で定年まで働き、女性は専業主婦となって、子どもを2人・3人産んで育てる」といった生き方を選んでいた人が多かったかもしれません。しかし、今は結婚しない人や子どもを作らない人も増えていますし、転職する人やフリーランスとして働く人も珍しくはなくなっています。
「これから、どんな人生を送りたいか?」に対する答えは、人によってバラバラですが、この答え、つまり、個人の生き方 のことを ライフデザイン といいます。
そして、この ライフデザインを具体な計画に落とし込んだもの を、 ライフプラン (人生設計)といいます。
ライフプランにはいろいろなものが含まれますが、一番よく耳にするのは、キャリアプランでしょう。「このように働きたい・このような仕事がしたい」というビジョンをもとにして、「その実現に向けて、いつまでに何をするか」という具体的な計画に落とし込んだものがキャリアプランです。
他にも、「子どもを大学まで行かせたい」「年に一回は旅行に行きたい」「10年後にはマンションを買いたい」といったプランを考える人もいるかもしれません。
このようなライフプランのうち、お金に関するプランを ファイナンシャルプラン といいます。ファイナンシャルプランを作成することを ファイナンシャルプランニングといいます。
ファイナンシャルプランを作るには、キャリアプランとそれに基づく 収入予測 、また、教育や住宅、老後などに 必要な資金 を予測する必要があります。
さらに、どのような 金融商品 があるか、といった知識も必要です。他にも、 税金、年金、ローン、不動産 など、幅広い知識が必要です。
ライフデザインが多様化しているため、他の人のプランを丸写しというわけにはいきません。各個人が自分でプランを作成する必要があります。ですが、先ほど述べたような幅広い知識を身につけるのは大変です。そのため、このプランを作る専門家、つまり、 ファイナンシャルプランナー が必要とされるようになってきました。
なお、ファイナンシャルプランナーは、英語では Financial Planner と書き、 FP と略されます。
まとめ
- ライフデザイン
- 個人の生き方
- ライフプラン(人生設計)
- ライフデザインを具体化したもの
- ファイナンシャルプラン
- ライフデザインとライフプランをもとにした資金計画
- ファイナンシャルプランナー
- ファイナンシャルプランを作る専門家
ファイナンシャル・プランニングの社会的役割
各個人がファイナンシャルプランニングを行おうとしても、一から金融商品や金融知識を身につけるのは大変です。一方で、金融商品は複雑なものが出てきたり、カバーすべき金融知識は広がっています。
ファイナンシャルプランナーは、この 情報格差を解消し、国民1人ひとりの経済的自立を支援する社会的役割 を担っています。
このため、ファイナンシャルプランナーには、次のような能力が求められています。
- 社会的に信頼される人格
- 相談におけるカウンセリング能力
- 法令遵守と高い倫理観
- FP各分野の専門知識や商品知識
- 情報収集・活用技能
- ファイナンシャルプランの立案・実行援助をする能力
- 専門家とのネットワーク構築
FP3級の試験では、「FP各分野の専門知識や商品知識」を中心とした能力が問われます。
ファイナンシャル・プランニングの職業的原則
ファイナンシャルプランニングを行うときには、顧客の収入や貯金額、家庭の事情、将来の予定など、個人情報を知る機会が多いです。また、顧客に説明する際に、説明が足りなかったり情報が古かったりすると、将来、金銭上のトラブルにつながる可能性があります。
そのため、ファイナンシャルプランナーには、次にあげるような 高い職業倫理 が求められます。
- 顧客利益の優先
- 顧客の立場に立って、顧客の利益を最も優先しなければいけません。ファイナンシャルプランナー自身や第三者の利益を優先してはいけません。
例えば、顧客が望んでいないにもかかわらず、自分の手数料収入につながる商品を組み入れてプランを作成する、という行為は慎まなくてはいけません。 - 守秘義務の厳守
- 顧客の許可を得ないまま、顧客の個人情報を第三者に漏らしてはいけません。
もし漏らしてしまった場合、顧客との信頼関係が崩れるだけでなく、損害賠償責任を負う可能性もあります。
ただし、許可を得れば、他の専門家に業務上必要な相談をすることはできます。 - 法令の遵守(コンプライアンス)
- ファイナンシャルプランナーの仕事は幅広いですが、中には専門の資格が必要な業務もあります。
他の専門家の独占業務を行ってしまわないよう注意する必要があります。
関連法規については、ファイナンシャル・プランニングと関連法規で詳しく見ていきます。 - 顧客に対する説明義務(アカウンタビリティ)
- ファイナンシャルプランナーが顧客に提案を行うときは、顧客の知識レベルや経験に合わせ、理解できるように十分に説明する必要があります。
- インフォームド・コンセント
- ファイナンシャルプランナーが顧客に提案を行うときには、ただ説明するだけでなく、顧客に理解してもらい、顧客からの合意を得る必要があります。
- 自己研磨
- プランニングに関連する専門知識の習得やアップデート、技能や能力の向上に努めなくてはいけません。
日本FP協会に掲載中の「CFP認定者の倫理原則」
厳格な倫理原則 | 日本FP協会 には、CFP認定者の倫理原則が掲載されています。以下の8つの倫理原則が掲げられています。
- 顧客第一
- 誠実性
- 客観性
- 公平性
- 専門家意識
- 専門的力量
- 秘密保持
- 勤勉性
2つ目以降は、1つ目の「顧客第一」が表す理想を具現化したものになっています。
問題を解いてみましょう
ここまでの内容を踏まえて、問題を解いてみましょう。〇か×か、答えましょう。
例題
ファイナンシャルプランナーには、顧客の利益を優先してプランニングを行うことが求められるため、顧客の意向に関係なく、顧客の利益が最大となるプランを作成するべきである。
Answer
×
プランニングは顧客の立場に立って考える必要があるので、「顧客の意向に関係なく」という部分が間違っています。
例題
ファイナンシャルプランナーは、職業倫理上、顧客情報に関する守秘義務を守る必要がある。
Answer
〇
正しい記述です。
例題
ある顧客へのプランを作成しているときに、プランについて弁護士に相談したい場合には、その顧客の知り合いの弁護士であれば、顧客からの了解を得る必要はない。
Answer
×
顧客の情報を第三者に明かすには、顧客からの了解を得る必要があります。顧客と第三者が知り合いであっても、例外ではありません。
ファイナンシャル? フィナンシャル?
ファイナンシャルプランニングは、英語で financial planning と書きます。この financial(財政の、金融の、という意味)は、ファイナンシャルともフィナンシャルとも読みます。どちらも正しい読み方です。
ただ、日本FP協会では、「ファイナンシャル」と表記されているため、このサイトでも「ファイナンシャル」で統一しています。