金融商品の関連法規
金融商品に関する法律
金融商品を売買する場合、一般投資家よりも金融機関のほうが知識も経験も豊富です。そのため、対等な取引ができず、だまされたり、不要な商品を買わされたりする可能性があります。
このようなリスクから投資家を保護するために、さまざまな法律が整備されています。
ここでは、金融商品販売法、消費者契約法、金融商品取引法 について見ていきます。
金融商品販売法
金融商品販売法とは、金融商品の販売をめぐるトラブルに対して、投資家を保護するために作られた法律です。
対象の金融商品は、預貯金、株式、債券、投資信託、保険、デリバティブなどです。幅広い商品が対象となっています。ただし、国内の商品先物は対象外です。
これらの商品を販売するときに、以下のようなことがあって、損害が発生した場合には、販売業者に損害賠償請求ができます。
- 説明義務のある重要な事項を、販売業者が説明しなかった場合
- 販売業者が断定的な判断を提供した場合
「説明義務のある重要な事項」とは、次のような内容があります。該当するものがあれば、説明しなければいけません。
- リスクに関すること
- 元本が欠損するリスクがあること
- 商品に含まれているリスクの種類
- 契約の解除に関すること
- 解除できない期間があること
- 解除するときに違約金が発生すること
損害賠償請求できる額は、元本欠損額です。払い込んだ額より受け取った額が少ない場合、その差額が元本欠損額です。
金融商品販売法は、2001年4月から施行されました。この法律ができる以前は、損害が発生した場合、損害との因果関係をすべて投資家が立証する必要がありました。しかし、立証が難しいことが多く、裁判が長期化することを嫌って、泣き寝入りするケースもありました。
しかし、金融商品販売法によって、重要事項の説明があったかどうかの確認さえできれば、因果関係や損害額を立証する必要はなくなりました。顧客側の負担は軽減されました。
この結果、どんな金融商品を買うときでも、「説明を聞きました」というチェックを毎回書かされることになります。購入者からするとわずらわしいですが、販売業者にとっては、「説明義務を果たした」ことを立証する大事な資料となります。
めんどうだからといって、説明を聞いてないのにチェックするのはやめましょう。損害が発生しても、損害賠償請求ができなくなる可能性があります。
消費者契約法
消費者契約法 とは、消費者と事業者の間の取引についてのトラブルに対して、消費者を保護するために作られた法律です。金融取引に限定するものではありません。
消費者が事業者とした契約について、次のようなケースでは、5年以内なら契約の取消しができます。
- うそを言われた
- 不利になることを言われなかった
- 将来の不確実なことに対して断定的な判断を提供した
なお、消費者契約法で保護されるのは、個人のみです。
金融商品取引法
金融商品取引法とは、金融商品の取引の公正を図り、投資家の保護や経済の円滑化を目的とする法律です。略して、金商法(きんしょうほう)ということもあります。
金融商品取引法がカバーする内容は多岐にわたっていますが、FP3級の試験では、適合性の原則がよく問われます。
適合性の原則とは、顧客の知識、経験、財産の状況などに照らして、不適切な勧誘を行ってはならないというルールのことです。
金融ADR制度
金商法では、さまざまなルールが定められていますが、もし金融機関とトラブルが生じた場合には、指定紛争解決機関(金融ADR機関)を利用することができます。
ADRとは
ADRとは、Alternative(代替的)、Dispute(紛争)、Resolution(解決)の頭文字で、「裁判外紛争解決手続」ともいいます。
指定紛争解決機関には、全国銀行協会や生命保険協会などが指定されており、トラブルがあったときには、ここに所属する弁護士などの専門家が解決に努めてくれます。
問題を解いてみましょう
ここまでの内容を踏まえて、問題を解いてみましょう。〇か×か、答えましょう。
例題
金融商品販売法では、金融商品販売業者等の断定的判断の提供等の禁止に関する規定は、一定の投資経験のある顧客に対して販売する際には適用されない。
Answer
x
断定的判断の提供は、すべての顧客に対して禁止されています。
例題
金融商品販売法によれば、金融商品販売業者等は、顧客に対し同法に定める重要事項の説明をしなければならない場合において、その説明をしなかったときは、それによって生じた顧客の損害を賠償しなければならない。
Answer
〇
説明義務のある重要事項を説明せずに損害が発生した場合は、その損害に対する賠償責任が生じます。ですので、正しい記述です。
例題
金融商品取引法に定める適合性の原則により、金融商品取引業者等は、金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況および金融商品取引契約を締結する目的に照らして、不適当な勧誘を行ってはならないとされている。
Answer
〇
適合性の原則に関する正しい記述です。